「お父さん、負けを認めて下さいな。」


優しい微笑みを浮かべるお母さんがお父さんに話しかける。


だけどお父さんはぷいと横を向いてお母さんから顔を背けた。


「お父さん?」


やっぱり不安になってお父さんを呼ぶと、


「紫衣ちゃんだったかな?
崎山さんは健康そのもの!
骨折だって1ヶ月もすれば治るって言われてるんだよ。」


婦長さんが私に話してくれた。


「でも、だったらどうして?」


婦長さんが面会に立ち合うのかがわからないよ。

疑問を口にすると婦長さんは豪快に笑いながら言葉を落とした。


「何も心配することはないんだよ。
崎山さんの悪いのは具合じゃなくて機嫌なんだから。」


「そうそう、紫衣が彼を連れて帰ってくると芽衣ちゃんから連絡がきてからずっと苦虫を潰したような顔で過ごしていたのよ。」


お母さんも笑いながら話をしてくれた。


「それって私のせい?」