わなわなと体を震わせるお父さん。
それにお父さんの後ろで車椅子を押している看護師さんの肩もふるふると揺れている。
もしかして…
「お父さん、本当はどこか具合が悪いの?」
お父さんがお母さんの隣の席についてすぐ、私は声を掛けた。
「ぶっ!……クク…アハハハ……。崎山さんが悪いのは具合なの?」
「フフフ…どうなの?
お父さん?」
だけどお父さんは困ったように眉をハの字に下げて口ごもり、その反対に看護師さんとお母さんは楽しそうに笑いながらお父さんに話しかけた。
「お父さん?」
わけがわからずお父さんを呼ぶと、
「具合は悪くないよ。
よく帰ってきたな、紫衣。」
普段通りの優しいお父さんが応えてくれた。
「清川さんみたいに暴れられたら困るから私も参加させていただきますよ。
崎山さんも清川さんに負けず劣らずみたいだからね。」
「部外者は出て行ってくれ!」
「ダメだよ!
この先の展開が予想できるんだから…
婦長としてはみすみす患者の怪我が悪化するかも知れないのを見過ごすわけにはいかないんだからね。」
なぜか言い争うお父さんと看護師さん。
やっぱりお父さん何かあるの?
面会に婦長さんが立ち合わなきゃいけないなんて…。
「やっぱりどこか具合が悪いんでしょ?
無理しないで!お父さん!」
怖くて不安で涙が溢れた。
「紫衣、おいで」
パニックを起こす私を見つめながら小さく両手を広げる佐和さん。
「佐和さん、どうしよう!お父さんが…。」
私はポロポロと涙を落としながら佐和さんの胸にしがみついた。
「落ち着いて、息を大きくしてごらん。」
佐和さんの優しい声に導かれ次第に心は落ち着いていく。
「もう大丈夫か?」
胸にうずめた顔を上げると優しい眼差しをした佐和さんと視線が絡んで尋ねられた。
「はい。」
私は佐和さんにニッコリと微笑んで返事をし、彼の腕の中から離れたんだ。