「まず、連絡しなかったのは入院したのが昨日だったからよ。
紫衣が家に帰ってくるっていうのは芽衣ちゃんから聞いてたから芽衣ちゃんには連絡が入っていたはずよ。
それと、怪我は大したことないの。
念の為検査をしなきゃいけなくてね。
それで入院しているのよ。
お父さんは足の骨を、お母さんは腕の骨を折っちゃったけどね。
紫衣が帰ってくるのをおとなしく待っていたら事故なんかに巻き込まれなかったのにね。
素直に聞かなかったから罰があたったのね。」


私の質問に応えるように一気に話してくれたお母さん。


「検査の結果はどうだったの?」


「まだ全部を聞いてはいないけど全員何もないだろうって言われたわ。」

「そう…。良かった。」

腕の骨を折った姿は痛々しいけど、他に何か悪いところがないって聞いて私は胸を撫で下ろした。

「次は紫衣の番よ。
まずは、そうね。
紫衣の隣の素敵な男性を紹介してもらおうかしら?」


体のことが心配で肝心の佐和さんの挨拶をスッカリ忘れていた私。


佐和さんに視線を向けるとニッコリと微笑んで、

「僕の事は気にしないで下さい。
お父さんが来られてから挨拶をさせていただきますので…。」


普段からそんなに言葉は乱れていないけどとても丁寧な言葉遣いで佐和さんは言ったんだ。


だけど、佐和さんの言葉に応えたのはお母さんじゃなく、


「お父さんなんて呼ぶんじゃない!」


さっきの看護師さんに車椅子を押してもらって食堂に入ってきたお父さんだった。