「何かあったのかな?」
食堂について椅子に座るとやっぱり不安が膨らんで、出てくるのはため息だった。
佐和さんは自動販売機でコーヒーを、私には紅茶を買ってくれて遅れて席につく。
「多分、芽衣ちゃんと島田だろ?」
「え?」
「取り込み中って言ってただろ?
それにあんた達もって…。
それって島田達の事じゃないか?」
「って事は芽衣ちゃんの両親も同じ部屋に入院してるの?」
「そうなんだろうな。」
佐和さんは落ち着いた様子でコーヒーに口を付ける。
「それって…。」
修羅場?
島田さんは今芽衣ちゃんのお父さんに詰め寄られてたりしてるのかな?
「見てみたいな。」
余裕たっぷりな言葉と落ち着いた微笑みの佐和さんの言葉に私はやっぱりおかしくなって笑った。
「佐和さんも同じなんじゃないですか?」
「確かに…。」
それでもニッコリと笑顔の佐和さん。
なんだか私一人がドキドキもやもやしているみたい。
どうして佐和さんはそんなに余裕なんだろう…。
「紫衣、おかえりなさい。」
考え事をしていると背中からお母さんの声がして慌てて振り返った私。
佐和さんは声に反応して立ち上がり声の方に体を向き返ると深く頭を下げた。
スマートな佐和さんの動きに私はポゥッと見惚れたまま立ち上がるのも忘れてたんだ。
「紫衣、元気そうね。」
近付いてきたお母さん。
腕を怪我したのかな?
三角巾で腕を吊っている姿が痛々しい。
「大丈夫なの?痛くないの?どんな怪我しちゃったの?
いつまで入院しなきゃいけないの?
どうして連絡してくれなかったの?」
お母さんの姿にショックを受けた私は質問が口から溢れ出ていた。
「そんなにたくさん一気に質問されたら応えられないわ。」
くすくすと笑いながら椅子に腰をおろすお母さん。
「とりあえず座って話しましょう。
お父さんも後から来るからね。」
お母さんの言葉に促されて私と佐和さんも椅子に座り直した。