エレベーターで5階まで上がって、病棟についた。
そこは外科の入院病棟。
503号室と教えられた部屋を目指して歩いていると、女性の看護師さんに呼び止められた。
「あんた達もしかして503号室に見舞いにいくのかい?」
少しぽっちゃりとした年配の女性。
病棟の責任者なのかな?
名札には婦長と書いてあるしナースキャップも他の人とは違っていた。
「はい。そうですが…。何か…?」
急な呼び止めに対応できない私と違って佐和さんは落ち着いた様子でその看護師さんに言葉を返す。
「やっぱり…。」
看護師さんは何を確信したのかはわからないけど、納得したように言葉を返してため息をついた。
そして、私達が向かう反対側の廊下を指差しながら、
「その門を曲がったところに食堂があるから、そこで待っていてちょうだい。503号は今取り込み中だからね。」
そう告げると503号に向かって足を進めた。
「何かあったんですか?」
もしかしてお父さん達に何かあったのかと不安になり尋ねる私に、
「あんた達みたいにさっき訪ねて来た人がいるんだけど…。
ちょっとね。
とりあえず私の言うとおりにしなさい。
後で顔を出すから。」
一方的に話されて彼女は私に背中を向けた。
「とりあえず、言うとおりにしておこう。」
佐和さんは私の手を取って指示された食堂に向けて足を進める。
なんだか出端を挫かれた気分になりながら私も佐和さんの隣を歩いた。