溜め息を落とす佐和さん。


待合いの椅子に腰をおろして両手を広げた。


「おいで。」


私は吸い込まれるように彼の腕の中に収まり背中に回った腕にギュッと抱き締められる。


座っている佐和さんと向かえ合わせに跪く私。


佐和さんは私の肩に顎をのせて話し出した。


「旅行に行くこともご両親に隠すつもりはなかったんだ。
だから初日はまずは挨拶をする予定だった。
病院ってのは予定外だったけど、キチンと挨拶を済ませてから紫衣を連れて行きたかったんだ。」

耳元で佐和さんの声を聞いていた私は彼の吐息を感じて胸がギュッと苦しくなる。


「もしも、もしも駄目だって言われたら…。」


「大丈夫。絶対に許してもらう。」


佐和さんの力強い言葉は私の不安を一気に消してくれる。


佐和さんはいつだって私の不安を取り除く天才だ。


だけど…。


相手はお父さんだよ?


「佐和さんに大丈夫って言われると本当に大丈夫って思えます。
だけど…。」


やっぱりお父さんが佐和さんの言葉をまともに聞くとは思えない。


よっちゃんみたいに…。

犬を追い払うような、そんな失礼な態度取られちゃったら…。


「やっぱり不安です。
相手はお父さんだもん!」