ずっと後ろめたくて甘えられなかった両親。
だけど、同じだってわかった。
佐和さんに教えてもらった。
水害で死に別れた両親の生まれ変わり、私はずっとお父さんとお母さんと繋がってるって知れたから、
「今、とってもお父さんとお母さんに逢いたいの。」
正直な気持ちでありのままを伝える私。
「俺も同じだ。
ありのまま、そのままの俺で挨拶するよ。」
佐和さんもいつもの冷静で落ち着いた佐和さんに戻っていた。
手を繋いでロビーに足を進めると、
「紫衣!石野さん!」
駆け寄ってきたのは芽衣ちゃんで、芽衣ちゃんの後ろからゆっくりと島田さんも近づいてきた。
「芽衣ちゃん!」
芽衣ちゃんはそのままの勢いで抱きついてギュッと私を抱き締めた。
「計画変更になったのにさすがは石野、対応能力高いね―。」
ニヤリと笑みを浮かべる島田さんを佐和さん睨みつけていた。
そういえば芽衣ちゃんからのメールで旅行の予定が送信されていたんだ。
そこには病院のお見舞いなんて書いてなかったっけ…。
「今日の宿泊先が書いてなかったっけ時点でここに来ることくらい察しはつくさ。
それに今日のこの予定は何があっても変更するつもりなんてなかったからな。」
呆れたような口調の佐和さんに睨みつけられた嶋田さんは私から芽衣ちゃんを引き剥がして、
「じゃ!後で。」
軽く手を挙げてスタスタとエレベーターに向かって歩き出した。
「紫衣、石野さん。
病室は503号室だよ!」
島田さんに引きずられるようにして足を進める芽衣ちゃんは私達を振り返って言葉を掛けた。
やっぱりな事に私は彼らの会話の内容についていけず、呆気にとられたまま芽衣ちゃんと島田さんの背中を見送ったんだ。