「行こうか。」


車のトランクから地元で有名なお菓子屋さんのバームクーヘンの箱とアレンジしてもらっている花を取り出す佐和さん。


「バームクーヘンだ!
そのお店のバームクーヘン買うの大変だったでしょ?」


「紫衣も好きだろ?
だからもう一個車に積んであるよ。
紫衣の分!」


ニッコリ笑顔の佐和さん。


嬉しくて佐和さんの腕に自分の腕を絡めて、私も笑うと、


「食べ物を与える時が一番いい笑顔ってのは少し虚しさを感じるけど、可愛いから許す。」


なんだかちょっぴり失礼な言葉を落としながら私の額に唇をよせた。


駐車場から病院まではそれほどの距離もなく、病院の自動ドアの前に二人で立ってその大きな建物を見上げた。


「緊張してる?」


佐和さんに尋ねると彼はニッコリ微笑んで、


「紫衣は?」


聞き返してきたんだ。