ドキドキしていたのに私は車が発進して暫くしたら眠ってしまった。
「紫衣、着いたよ。」
佐和さんに起こされるまでぐっすりと眠ってしまっていた私。
「ごめんなさい」
重い瞼を持ち上げて佐和さんに謝った。
「紫衣の寝顔可愛かったよ。」
だけど佐和さんはニッコリと笑って私の唇に自分の唇を重ねて、
慣れないバイトで疲れてたんだろ?って優しい言葉を返してくれた。
車は大きな駐車場に止められていて、
「あの建物が紫衣の両親が入院している病院だよ。」
目の前の大きな白い建物を指差しながら教えてくれた。
そして佐和さんは車のドアノブに手を掛けて、
「さて、出陣だ!」
気合いの入った声を上げて車からおりた。
「ぷ……、出陣って戦いなの?」
私も車からおりて佐和さんに声を掛ける。
「戦いだろ?
愛する娘を誰にも渡したくないって思ってる父親と、その父親から愛する人を奪いたいって思ってる俺の男と男の勝負なんだよ。」
「大袈裟だよ…。」
佐和さんの真剣そのものって態度で紡がれる言葉がおかしくて私は声をたててケラケラと笑いながら応えた。
「けど、今日は戦いは挑まず、まずはお見舞いだな。」
「そうだね。
戦いはお預け?」
「それは相手次第だ。」
どこまで本気なのか全部もしかして冗談なのかわからない佐和さん。