「今の両親はわからないけど、私のお父さんはとっても私に甘くて、だけど私の側にくる男の子にはとっても厳しい人でした。」


そう、隣に住む与一君は私が大きくなるにつれお父さんに遠ざけられたんだ。


よっちゃん、しーちゃんと呼び合う幼なじみの与一君とは小さい頃結婚の約束をしていたっけ。


「懐かしいな…。」


「何が?」


思わず口にした言葉に佐和さんはすかさず聞き返す。


「よっちゃん。」


「誰?」


「幼なじみの与一君。
小さい頃、よっちゃんのお嫁さんにしてくれるっていう約束を警戒してお父さんたらよっちゃんにはキツくあたってたのを思い出したの。」


「ふーん。
――――…で?」


よっちゃんが好きなんだ?って佐和さんは眉間に深い皺が寄っている。


「え?」


突然の不機嫌な佐和さんにきょとんとしたまま声を掛けると車は静かに路肩に寄せられて停車した。


「佐和…―ん―…ンン…」


彼の名を呼ぼうとする私の唇をいきなり塞ぐ佐和さん。


荒々しい口づけに驚いた私は彼の胸をドンドンと拳で叩いた。


「よっちゃんのお嫁さんて何?」


いったん放れた唇から紡がれる言葉に応える間もなくまた唇を塞がれて、

「佐和さん、ひどいです。」


口づけが終わってクッタリとシートに体を沈めた私は涙目で彼に訴えた。