ニッコリと笑った佐和さん。


帰る?


今から…?


驚く私を抱き寄せて、


「今回の計画の一つは紫衣の里帰りも入ってるんだ。」


「嫌です。
――…帰れません。」


だって怖い…。


ずっと連絡もしない白状な私を受け入れてくれるなんて思えない。


だから俯いたまま首を横に振り続けた。


「さっき紫衣が両親を思い出したのは虫の知らせってやつかもしれないよ?」


「何かあったの?」


佐和さんの言葉に胸がざわざと騒ぎ出した。


「今、ご両親は入院されている。」


「っ!!」


「命に別状はないんだ。シッカリとして聞いて欲しい。」


震え出す体を自分で抱き締めて頷く私。


「昨日、芽衣ちゃんに芽衣ちゃんの両親から連絡があったらしい。
芽衣ちゃんの両親と紫衣の両親は仲が良いんだな。
紫衣を驚かそうと紫衣にだけ内緒で紫衣と芽衣ちゃんの家を訪ねる計画を立てていたんだ。」


その途中で事故に巻き込まれたらしいんだって言葉に私は頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を受けた。


「最初から島田は芽衣ちゃんの家に、俺は紫衣の家に挨拶に伺う予定だった。
だから今回の旅行は俺も島田も紫衣や芽衣ちゃんの暮らしてきた街から始めるつもりだったんだ。もちろん、紫衣のご両親にも芽衣ちゃんのご両親にも芽衣ちゃんから連絡してもらって了承ももらっていた。」


「なのにどうしてお父さん達は私を訪ねてきたの?」


「驚かせたかったって言ってたよ。」


両親は芽衣ちゃんから連絡を受けて了承し、でも私達の暮らしを見てみたいと急遽訪ねてくることにした。


それは改まって畏まって挨拶をする予定の佐和さんと島田さんの普段の姿を見たいという気持ちと抜き打ちで私達の暮らしぶりを見るためだったらしい。


「めちゃめちゃ愛されてるよ私達って芽衣ちゃん笑ってたよ。」


「だけどそれで事故しちゃうなんて…。」


「それも言ってたかな?人騒がせなんだからって芽衣ちゃんも泣いてたって島田に聞いたよ。」