「今日からの事を、今回の計画を全部話すから聞いてくれるか?」


少し遠慮がちに掛けられた佐和さんの声。


「旅行は今日からなんですか?」


後部座席に積まれた私の鞄。


芽衣ちゃんが荷造りしたんだね。


私は何も聞かされてない。


「荷物も芽衣ちゃんから預かったの?」


何も聞かされてないことに寂しさが募る。


「へ?荷物の事も知らなかったのか?」


佐和さんは驚いた様子で話しかけてきた。


そして髪を掻きむしるように頭をグシャグシャと掻いて、


「結局俺も芽衣ちゃんと島田にやられたってわけだ…。」


ポツリと呟きを零して車を路肩に止めた。


佐和さんもやられたってどういうことなんだろう…。


私だけが何も聞かされていなかったんじゃないの?


「佐和さん?」


ハンドルに額をつけて前屈みにもたれ掛かる佐和さんに声を掛けるとブーブーと携帯の着信を知らせる振動がバックの中で響いた。


バイト中だからマナーモードにしたままの携帯。

「多分あの二人からだろ?」


目だけを動かしてバックの中で震える携帯を見るように促す佐和さん。


メールなのか電話なのか判断がつかない状態なので私は慌ててバックの中から携帯を取り出して確認した。


「メールです。」


手短に伝えて携帯を開き、操作すると、これからのスケジュールがびっしりと書き綴られていた。