一緒に来ようとした妃毬はマスターに止められて、カウンターに座るのが見えた。
目の前には美樹と美樹の隣に座る拓海さん。
それを見たくなくて、俯いてまた唇を噛み締めてしまった。
「奏多…」
「っ、ごめ…なさ、い……美樹の言う通りだから」
喉に張り付いた声を振り絞れば情けないような声しかでない。
それに、小さいため息が聞こえて床しか見られない。
「じゃあ…あの時の君が言ってた女の子がウサギちゃん、って事か。」
英部長にも答えは返せなかった。
勇気を振り絞って正面に座る拓海さんを見れば、いつものような優しいダークブラウンはなくて、
今まで見た事がないような冷えたダークブラウンで見られていた。
「拓海さん…あの時言ってくれたよね?姉さんと別れたって私の味方だって。」
「…………そうだな…」
「拓海!!」
小さいため息と共に吐き出された言葉は私の世界から色を無くすのには十分な威力があった。
立ち上がった英部長の足元に視線を下げて、何も言わずにただ口許に笑みを張り付けるしかなかった。
「美樹ちゃんがあの時、どうなったかお前だってわかっているだろう?」
「だからって、ウサギちゃんにそんな言い方はないだろ!」
「奏多が言っただろう。美樹ちゃんが言った事に間違いはない。そうなんだろう?」
今の私はどう映っているのだろうか。
一つの命を奪ったくせにのうのうと生きている悪魔だと思われているのだろうか。
知られたくなかった。
拓海さんにだけはこのことを知られたくなかったの。
アナタに見放されたら、
私の世界は色を失ってしまうから