「………あんたは拓海さんにはふさわしくない。あんなに良い人にあんたみたいな悪魔は無理。」
「そ、んな…」
「あの時、死んだのがあんただったらヨカッタノニ…」
悪魔、確かに私は悪魔なのかもしれない。
どんな形でも、あの時あの子を殺したのは私なのかもしれない。
目の前が真っ暗になった。
「奏多!こんな女の言う事真に受けちゃダメだって!」
「どうして?本当じゃない。奏多がいなかったらあの子は生きてたもの。」
美樹の言葉も妃毬の言葉も、何も頭に入ってこない。
ただわかるのはマスターが困惑の表情で私たちを見ている事だけ。
「貴方だって許せないって言ってくれたよね?………拓海さん」
足元が崩れた。
美樹が見ているのは紛れもなく私が大好きな人。
これから先、ずっと一緒にいて幸せを分かち合いたい。
そう思う人。
「た…くみさ、」
「ねぇ、拓海さん。あの時言ってたよね?………私の子供をコロシタ女を許さないって。」
「っ……美樹ちゃん…」
見上げた拓海さんは今までみた事もないくらいに険しい表情で、後ろには英部長がいる。同じように険しい表情をしていて、私は二人を見る事はできなかった。
「拓海、奥で話せ。」
「……はい、お借りします。マスター」
周りの空気が変わりはじめた事でマスターは奥の扉を顎で示す。
それに一礼して、私を見ている拓海さんを私は見れないの。
「美樹ちゃん、奥に行こうか。……奏多?」
「っ…」
カタカタと体が無意識に震える。
今にも零れそうな涙を堪えるように唇を噛み締めれば微かに鉄の味がする。
「ウサギちゃん、行こうか?」
いつの間にか後ろにいて、私の背中を摩ってくれる英部長。
ごめんなさい、
どうして私に触れる手が部長なんだろう。
どうして私に触れてくれるはずの手が私じゃなくて美樹に触れているの?
どうしようもない闇だけが
私の目の前に広がっていた