ただ、貴方に
最上級の愛を捧げたい。



きっとありえないようなプロポーズなんだと思う。
会って間もない、付き合って間もない、しかも初めて身体を重ねて幾分も経っていない、そんな状況なのに。

私は小さく頷くんだ。

貴方の笑顔を近くで見ていたいから、ただそれだけのために頷くんだ。


「ありがとう、奏多。」

「私も…ありがとう、拓海さん」


ベッドの中で寄り添ってじゃれるように触れ合って、鼻をすり合わせて笑いあう。
ただそれだけが最上級の幸せだと思えるの。


「起きれる?父さん達にきちんと話さなきゃな。」

「あ…そう、ですね…」


思わず敬語になってしまえばキュッと鼻を摘まれ、苦笑を浮かべながら私を見る拓海さん。


「こら、敬語。」

「ごめんなさい。」


そんな些細な事すら幸せなの。
自分が苦労しているなんて思わない。けれど、こんなに幸せなのは生まれて初めて。

拓海さん、貴方は私にたくさんの初めてをくれた大切な人。



「はい、これ着て。」


渡されるのは私の服、ではなくて見知らぬ女性物の服で。
首を傾げれば恥ずかしそうに頭を掻いて目を細める。


「奏多に似合うと思って…取引先の近くで買ったんだよ。」


ベロアの柔らかいふんわりとしたワンピース。真っ白なふわふわのワンピースにはところどころにたくさんの蝶が色とりどりに刺繍されている。


「も、貰えない!」

「奏多に着てほしくて選んだんだよ。でも、奏多が着ないなら捨てるしかないね。」


ほら、そうやって断れない理由を言うんだから。
なんだか洋服が泣いているような気さえしてきて、私はそれに手を伸ばして受け取ってしまう。