ふと感じた心地好い香りに重い瞼を持ち上げれば、優しい色を宿したダークブラウンがすぐ近くに見えた。
「奏多、大丈夫か?」
「…ん、大丈夫…」
「手加減できなくて悪かった…君があまりにも可愛いから。」
サラリと零された言葉にドクドクと心臓が煩く音を刻み、顔が熱い。
拓海さんを見れば厚い逞しい胸板や腕が惜し気もなく晒されていて、顔に火が付くんじゃないかってくらいに恥ずかしい。
「少し、いや…大分無理させてしまったな。」
私のほてる頬を撫でながら目尻を下げる拓海さんに小さく首を振って、自分でもわかるくらいにふにゃりと口許を緩ませていた。
「ううん……、ごめんなさい…私慣れてないから…」
私はこれ以上なんてないくらいに幸せだったし、初めてなのにすごく心地好かった。
けど、拓海さんはどうだったんだろうか。
「気にする事なんて何もないよ。俺も幸せだし、何よりもヨカッタよ。」
「っ…うん、そっか…」
シーツ越しに感じる拓海さんの熱にまた身体がほてる。
それが恥ずかしくて拓海さんから目を逸らせば、腰に腕を回されて1ミリも隙間がないくらいに抱きしめられた。
「奏多、先に謝りたい事があるんだ。」
「謝る…って?」
神妙な表情の拓海さんに、なにを言われるか怖い。
初めての私じゃダメだったって言われるんじゃないかって、暗い方向にしか考えられない。
「いや、奏多?別れるとかじゃないよ。むしろ、俺は君じゃなきゃもうダメなんだし。」
苦笑混じりの言葉にホッとしながらも、とんでもなく恥ずかしい事を言われた気もする。
「謝ると言うか……あー、言いづらいんだけど、」
目をキョロキョロと泳がせる拓海さんに首を傾げれば、諦めたように小さく息を吐き出して、スッと形の良い唇を動かした。