片手で器用にボタンを外されればスルリと脱げるラフなビジネススーツ。
至極丁寧に、至極気遣うように、身体に這わされる指や舌が気持ちよくて。
ただ、拓海さんの指で奏でられる音楽のように甘い響きを含んだ音色を奏でる。
ただ、気持ち悪くしか思わなかった行為が貴方に掛かれば神秘的でなおかつ神聖なものにすら感じてしまうんだから不思議よね。
ひたすら呼ばれる名前と、ひたすら囁かれる愛の言葉達。
「奏多、大丈夫か?」
「っ…ん…ぅ、」
「愛してる、奏多…」
引き裂かれるような痛みすらも愛しいものに変えてしまう。
シンとした暗闇に耳を塞ぎたくなるような淫らな水音と、信じられない位に大胆に甘い自分の声。
微かに感じる貴方の切羽詰まるような息遣いが嬉しくて、悲しくもないのに涙が止まらないの。
「痛い?」
「ちが……嬉しくて…っ」
言葉を紡げば嬉しそうに細められるダークブラウン。
キシリと厭らしく軋むベッドの音が恥ずかしくて、それでも揺さぶられる身体に意識が白に沈みそうなのを必死に引き止める。
「愛してる…奏多がいれば何もいらないくらいに…」
「ぁ…ん……わ、たしもっ…拓海さんしかイラナイ…あぁっ」
揺さぶられる意識の中で紡いだ言葉は貴方に届いた?
身体の奥に感じる熱に意識を引き止められなくて、心地良い気だるさと貴方の体温や重みを感じたまま、
私はそこでブラックアウトしてしまった。
沈む意識の片隅で優しく、愛を囁いてくれたように感じて。