ドキドキとうるさい音を奏でる心臓を諌めようって深呼吸しても止まる事はない。


「奏多、本当に良いのか?」

「うん、良い…」


真っ直ぐにダークブラウンを見れば優しい色。耳には甘い響き。
嫌、なんて微塵もない。

ゆっくりと近付く拓海さんの色情を載せた顔にまたドキリと胸が高鳴り、小さく息を吐き出せば優しく髪に触れる指先。

すべてにドキドキしてしまうのは、初めて、とかじゃなくて貴方がいるから。


髪を撫でられながら唇に感じた温もりに幸せを感じる。軽く何度も合わせられる唇が温かくて、何よりも幸せ。
軽く合わせられるものからくすぐったいような戯れの口づけへ、唇をチロリと舐められ、くすぐったくて薄く唇を開けば開拓されるように忍び込んできた拓海さんの舌。

どうすればいいかわからずにただ拓海さんのグレーのスーツを掴めば後頭部に回された大きな手に力が篭って、深く、悪戯に口中を遊ばれる。


「っ…ん、ふ…」


歯列をヌルリとした舌になぞられ背筋がむず痒いような不思議な感覚。
そのまま弄ばれるように口の中をなぞなれ、舐められ、口の端からは私のか拓海さんのかわからない唾液がスルリとこぼれ落ちる。

それすらも惜しいと言うように唇を離し、顎を伝い落ちる唾液を追い掛けるように首筋にまで伸びるヌルリとした舌。
背筋にぴりぴりと電気が流れるような感覚に薄く開いた唇からは自分のものではないような甘ったるい声が出てしまう。


「奏多…愛してるよ。」

「んっ…拓海さ…」


着ているラフなビジネススーツすら用を成さないくらいに、すべてを見透かされる。
首筋に這わされる舌があまりにもエロティックで、ただシワになるくらいに強く貴方のスーツを握りしめるしか今はできない。