泣きたいわけじゃないのに流れてしまう涙はなんなのか。
きっと、この涙は貴方へのたくさんの想いが詰まっているんだと、そう思うから。
「奏多、悪いけど離れて。」
「っ…ごめ…なさい」
優しい音色で拒絶されるとチクリと胸が痛む。
また違う意味合いを持った涙を見られたくなくて、離れて顔をすぐに背けた。
「違うよ、嫌とかではないんだよ。奏多?」
「……っ…」
「これ以上は…君をすぐにでも抱きたくなるから、傷付けたくないからね、奏多を」
チクリがドキドキに変わる。
あぁ、こんなにも私はゲンキンな女だったのかな。
貴方の言葉たった一つで淋しくも悲しくも、嬉しくも幸せにもなれてしまうなんて。
「言っただろう?俺は君を傷付けたくないんだ。奏多が本当に良いと思うまでは、どんなに時間かかっても待つから。」
どこまでも大人でどこまでも紳士な貴方だから、私は今だって構わないんだよ。
貴方と、拓海さんと一つになりたいってフシダラかもしれないけど本当にそう思えるんだから。
「ちが…私はっ拓海さんとだったら良いの。だって、こんなに誰かを好きになるなんてこの先きっとないもん…」
あれだけ恥ずかしかったのに、思いの外、すごく冷静だった。
お付き合いする事すら億劫だったはずなのに、拓海さんと出会っただけでこんなにも気持ちがコロリと変わってしまうなんて。
「奏多、本当に?本当にいいのか?急げば後悔する事だってあるんだぞ?」
「しない!拓海さんとだったら後悔なんてしないわ。」
だってそうでしょう?
ほら、こうして貴方のダークブラウンを見るだけでホカホカとした暖かい気持ちになれる。
きっと、なにをしても貴方とだったら後悔なんてないんだから。