「柏木、なんなの」

「お黙り!!葵さん!!あの女に何かされたの?何を言われたの!」


肩をガクンガクンと揺らされ、話すに話せない私はただ揺らされ、段々と気分が優れなくなる。


「ストップストップ、ウサギちゃんヤバいからお前少し落ち着け。」

「…あ、ごめんなさい。葵さん、大丈夫かしら?ごめんなさいね…由里の事聞いて私ったら頭に血が上ったみたいで…」


申し訳なさそうな円香さんに、どうにか笑みを張り付けて大丈夫だと告げれば本当に申し訳なさそうにごめんなさいと謝られてしまった。


「おい……由里って」

「あの、由里、よ。拓海に会いにきたらしいわ。あのクソ女…どんな神経してるか知れないわよ。」


英部長に今にも噛み付きそうな円香に一つ、疑問が浮かんだ。

由里さんと言うのは多分、さっきの綺麗な女性だろう。
その由里さんが拓海さんに会いに会社まで来たと言う事は、私は拓海さんとはいられないのだろうか。
チクリと痛んだ胸を押さえて眉を寄せれば、それに気づいた二人が心配そうに私を見ていた。


「ウサギちゃん…あの女に何か言われた?」

「い…いえ、なにも、」

「ばれる嘘は付かない。ほら、言ってみなよ。言ったら楽になるかもしれない。」


今の部長は、英部長ではなく、きっと英 伊織なんだろう。
厳しい言葉に反して、どこか私を諭すような優しさがあって、それ縋りたい自分と、拓海さん以外には縋りたくない自分、それに押し潰されそうだ。


「葵さん…あの女は最低最悪なクソ女なのよ。だから貴女があの女をどう言おうが私も英くんもなにも、思わないわよ?」


由里さんを"クソ女"なんて言う円香さんに私は思わず首を傾げてしまう。