「これ以上したら…奏多を傷つけてしまいそうだな。」
どれくらいキスをしていたかなんてわからない。それくらい長く拓海さんとの甘い時間を過ごして、不意にそんな事を言いながら離れる拓海さん。
「そんな事…」
「いや、真剣だからむやみやたらに君を抱きたくないからね。その時は初めての奏多に相応しい場所で、ね?」
拓海さんの悪戯な言葉に一気に顔に登る。初めて、なんて拓海さんには言ってないはずなのに。
知られていた事が恥ずかしくて、思わず目の前の広い胸に顔を埋めていた。
「奏多、可愛い。」
「拓海さんのイジワル…」
クスクスと笑うから、頬を膨らませて見上げれば優しく細められるダークブラウン。
それだけでまた逆上せる頭。
「好きな子を虐めたいのはいくつになろうが変わらないさ。」
何を言っても私が拓海さんに敵うはずもない。
それがなんだか悔しくて、少しは対等になりたくて、目一杯に背伸びをして拓海さんの頬にクチビルを付けてみた。
それに目を丸くする拓海さんが可愛くてむくれていたはずなのに口許が緩んでいた。