導かれるようにフラリと拓海さんに近寄れば優しく細められるダークブラウンの瞳に、ドキリと胸が高まった。


「二週間ぶり…だな。」

「………は、い…」

「会いたかった。奏多は会いに来てくれないから」


からかうように出す笑い声も、私の右手の指に絡まる拓海さんの長く骨張った指に心臓は有り得ない位、ドキドキと音を立てる。


「奏多?」

「は、はい!」

「大丈夫?ボーッとして…」


ボーッとしていたのは貴方に見とれたから、なんて言えるわけもなくて。
ちらりと見れば心配してくれているのがわかるけど、貴方を見れば顔が熱くなるからちゃんと貴方を見る事もできないの。


「ごめんなさい…」

「いや、具合が良くないわけじゃないなら良いんだよ。それより…今日は何か予定ある?」

「予定はありませんけど…、」


拓海さんの言葉に私はただ首を傾げていた。
二週間前、確かに拓海さんとのお付き合いは始まったけど、不思議なくらいに会う事もなかった。

拓海さんからメールや電話は毎日くれていたけど、目の前にいると言うだけで声を出すのも難しいなんて。


「よかった、行きたい所があるんだ。付き合ってくれる?」

「えと……どこに…」

「ん?実家。奏多を両親にきちんと紹介したくてね。まぁ、話しはしたけど会わせろって言われていたし。」


この人は今、なんて?
さらりとなんだかとんでもない事を言ったような気がするけども…