次の言葉なんて考えていない私はまた黙ってしまい、何か言わなきゃと焦れば焦るほど、言葉なんて思いつかなくて。
「葵さん」
「は、はい」
「結婚は今は考えなくても良い。でも、俺と付き合ってほしい」
カップを落としそうな手に力を入れて小さく息を吸う。
「……は、い…」
「本当?本当に?!」
何度も確認する社長がなんだか可愛くて、小さく笑い首を縦に振る。そうすれば本当に嬉しそうに笑う社長がいて、私まで嬉しくなって。
きっと、この時が、これから先を見ても一番幸せだったのかもしれない。
「葵さん、……奏多、ありがとう。」
「社長も…ありがとうございます。」
マグカップを置いて私の横に座り直した社長は私の手を握って笑顔を見せてくれる。
「社長はなし。拓海って呼んでほしい。」
「………た、拓海…さん…」
名前を呼んだだけで頬がありえない位に熱くて。
それでも、名前を呼んだだけで嬉しそうな社長、拓海さんに私はこれが、この暖かくて居心地が良い気持ちが恋なのかな、なんて思った。
「奏多、愛してる…」
ふと見た瞳は柔らかい光があってふわりと腰に回された腕は暖かくて、何より、拓海さんから香るフレグランスはものすごく心地好かった。