夢、そうだ。さっきまでの事は全部夢だ。
そうだよ、ただのパンピーな私が会長や社長と話すはずがないんだから。
見覚えのない真っ白な天井を見てそんな事を思う。
「……此処、どこ…まだ夢?」
そう、見覚えがない天井。周りを見渡せばモノトーンの家具、ちなみに私がいるのがバカみたいにおっきなベッド。
ベッドも黒いシーツで正直、全く生活感がないような部屋のなか。
「あ、目が覚めた?」
「……………夢じゃない……え?えぇ!」
カチャリと音を立ててドアが開き、入ってきたのは長身にサマーセーター、ダメージジーンズをモデル並に着こなす社長。
今の状況が全く飲み込めません。
「会長室で君、気を失ったんだよ。君の家もわからないし、そのままあそこにいるわけにいかないだろう?」
優しい物腰に私はなんだか物凄く申し訳なかった。
話の筋から行けば、社長はワザワザ私を此処に運んでくれたらしい。
「申し訳ありません…ご迷惑を……」
「構わないよ。それよりも、体調は大丈夫?」
「全く問題ありません。…此処は?」
「俺の自宅。会ったばかりの男にホテルに連れていかれるよりはマシかと思ったからね。」
ごめんなさい、大差はないと思うんです。
布団から慌ててはい出て、ベッドの上に正座する私に社長は笑い、ギシリと音を立てて私のすぐ近くに腰を下ろした。