ある日大雨が降った。
ぼくはとけはじめた…。
ゆきちゃんは家からとびだしてきてぼくに赤いマフラーを巻いてくれた。
大きな傘もくれた。
ゆきちゃんは寒そうにしながらぼくの隣に座ってぼくのことを見上げた。
まるい瞳がキラキラと輝いていた。
見つめられてすこし恥ずかしくなった。
少しするとゆきちゃんはママに呼ばれ、急いで家に入っていった。
雨が降っていてもゆきちゃんのくれた大きな傘がある。
ぼくを守ってくれている。
ゆきちゃんのマフラーもポカポカであたたかかった。
次の日から何日かゆきちゃんはぼくのところへ来なかった。
いつも窓からのぞいていたのに…
窓からも一度も顔をださなかった。
ただいそがしそうにゆきちゃんのママが出入りしているだけだった。
ゆきちゃん…どうしたんだろう。
冬がすぎようとしていた。あたたかな日が続いていた。
ぼくはもう気づいていた。
もうすぐゆきちゃんとおわかれかな…って。
¨ありがとう¨をまだ伝えてないのに。
一番伝えたい気持ちを…。
「いってきまーす」
「あたたかくしていくのよ」
「はーい」
ガチャ
太陽が顔を出したばかりの朝。
ドアを元気にあける。
「あれ…ゆきだるまさん?」
溶けたゆきだるまの前にそっと立つゆきちゃん。
「なに?これ…」
とけたゆきだるまの近くに置いてあるキラキラと光るもの。
「ネックレス…?」
キラキラした雪の結晶のネックレスだった。
ポロ。
ゆきだるまの上に優しく落ちた涙。
「ゆきだるまさん…ありがとう」
キラキラと輝く太陽の光がゆきだるまとゆきちゃんをそっとつつみこんでいた。