ぼくは雪だるま。
はかない命の雪だるま。
それは
ある大雪の日のこと…。
ぼくの目の前に
赤いマフラーの小さな女の子が立っていた。
大きな瞳でぼくのことを見ていた。
すごく愛しくみえた。
「はじめまして。あたしゆき」
そう言ったゆきちゃんの笑顔は太陽のようだった。ぼくにはまぶしすぎるものだった。
溶けだしてしまいそうになった。
でもぼくはゆきちゃんの太陽のような笑顔が大好きだ。
毎日ゆきちゃんは窓からぼくのことをのぞく。
ぼくと目が合うとにっこり笑って手をふってくれる。
寒い日でもポッとあたたかくなる。
晴れてる日ゆきちゃんはぼくにお話を話してくれる。
このあいだはシンデレラって言う女の子のお話。
「今日はね赤ずきんちゃんのお話するね」
ゆきちゃんは笑顔で話し始めた。
いくら晴れてる日でもゆきちゃんにとっては寒いはず。
だけどゆきちゃんはいつも笑顔で話してくれる。
「ゆきーそろそろ家に入りなさい」
ドアを開け玄関からさけぶゆきちゃんのママ。
「はーい。ゆきだるまさんまた明日ね。たくさんお話してあげるから」
そう言って手をふって走って家に入っていった。
今日もありがとう
ゆきちゃん…。
ゆきちゃんとお話しできたらいいなぁ。
ぼくもしゃべれたら…
¨ありがとう¨
を伝えられるのに。
次の日
ゆきちゃんは赤いマフラーを巻いてぼくのところへ来た。
なにかを小さな手でにぎっていた。
それをぼくに見せるようにパッと手を開いてみせた。
中にはまるくて穴のあいているものが入っていた。
「これはボタンっていうのよ」
とても優しい声で言った。
ゆきちゃんはいろんな言葉をぼくに教えてくれた。
ゆきちゃんと出会って初めてのことがたくさんあった。
「はい」
そう言ってゆきちゃんは大きなボタンを一つとりぼくにくれたんだ。
それも3つもくれた。
ぼくの大切な宝物がまたふえた。