まだ海の底と空の果てが交わっていた頃、
なぜそうなのか、いつからそうなのかは分からないけれど、風の吹かない丘があった。
 
大地に風が吹き抜けようとも、その丘には一度として風が吹き抜けることはなかった。
 
そして同時にシルファという存在があった。
シルファはその丘から離れることはなかった。
 
ただ、世界を眺めていた。 
 
世界はまだ混沌としており、地上では太陽が沈むことなく灼熱の光を振りまき、全てのものを焼き尽くす。 
 
海は高熱と猛毒に包まれ踊るように荒れ狂う。
 
そして稲妻が大地を切り裂いた時、最初の崩壊が始まった。
 
世界は沈んだ。
 
あとに残ったものは風の吹かない丘とシルファだけだった。