ある時〈私〉は真っ白な部屋でいくら探しても見つかることのない出口を探していた。

いくつも扉はあったけれど、どの扉も、決して〈私〉が期待していた景色を見せてはくれなかった。
 
何枚目かの扉を開けた時、〈私〉はどこへも行けないのだと理解した。

ましてや、〈私〉が望む場所へなどは。
 
〈私〉が望む場所?
それは一体どこなのだ?
〈私〉はどこへ向かおうというのだ?
 
〈私〉が辿り着いた場所はここだ。
他のどこでもない、この場所だった。
 
あの女も言っていた。
定めなのだと。
 
これは夢。
邪悪でイビツな夢。
安らかで平穏な夢。
 
なら、この涙も夢?
この嗚咽も夢?
数え切れない夜も夢?
 
〈私〉は一つの扉の向こう側に、飛び込んだ。
 
…。
…。
…。
…。
 
…誰かが、何か言っている。
けれど、〈私〉にはもう、分からない。
その意味を掴むことは、もう、出来ない。
 
「…ですから申しましたのに…。あなたはここに留まる定めだと…。あなたは決して逃れられない。無理に変えようとすれば、溶けて…消えてしまう…」
 
…誰かが、何か、言っていた。