たしかに、どうもしっくりこないとは祖父母の愚痴だ。
「似合わなくても商いはできます。」
「そう言われりゃあそうか。でも周りは違うこと様々言ってんじゃないのか。」
「……。」
「まあ、歩きながら考えたらいい。ゆっくりなあ。」
茂木さんは右肩を二度叩いて相談室に戻っていった。
しっかりな、という太い声がホールに響いた。
そう、周りは色々なことを言ってくる。
難関大学への進学とか、学部だと医学部とか。
はたまた語学力を活かして留学もいいとか。
でも、それも模試やTOEICの点数から言ってる事だ。
そう思えば聞き入れる気にはなれなかった。
すっと体が冷えていく。
頭ではわかっているつもりなんだ。
大人にだってきちんとした考えがあること。
僕の能力を評価してくれていることや、それを活かす場を示してくれてること。
ありがたいとも思う。
けれど、自分の卑屈な部分が拒絶するのだ。
大人になれば折り合いがつくようになるのだろうか。
ぼんやりと感情のせめぎあいに耳を傾け、ため息をひとつ。
調査書の第一希望欄に「大学進学」とだけ書いた。
うきうきしていた昼休みの気分はどこへやら。
職員室への足取りは重かった。