「先生が何度も話してらしたのに。」
呆れた声で言われると、責められるより反省しないといけない気になる。
「それも気をつけてるつもりなんだけど、なかなか直らなくて。」
「人の話を聞くって大事よ。いろんな意味でね。」
杉下は小さく笑って、眉村先生のところへ忘れずに行くように釘を指してから席を離れた。
人の話を聞くとか、進路とか、杉下の意味深な表情とか。
頭の中をぐるぐると回って収拾がつかないうちに、残りの昼休みは終わった。
その日の放課後、階段前のホールで進路調査書を広げていた。
教室では当番が清掃している時間で、空間は机を動かす音やふざけあう声で満たされている。
外を眺めるカウンター席に座り、自販機のココアを飲めば準備は整った。
0.3ミリのボールペンを握って、まずクラスと出席番号、名前を書く。
さあ、ここからが問題だ。
しかし、ホールは一面の窓から光が差し込み、暖かい空気に包まれている。
整ったのは昼寝の準備だったか。
意気込みも放課後の喧騒も徐々に遠退いて行くのを感じつつ、ペンを転がした。
びくっ。
右肩に衝撃を受けたことで体が跳ねた。