「え、理事長?って、」

戸惑う僕をきょとんと見つめる六つの瞳に、事実だと悟る。

「この学園の?」
「え、ひーちゃん知らなかったの!?」
「君は教えてくれなかった。」

少々冷たい目で見やれば、明後日の方向に視線をやって、そうだったかなあと、とぼけている。

「祖父が理事長だからといって何かあるわけではありませんから。」

宮藤は眉を八の字にして微笑んでいるが、僕としては気にしない方が難しい。

編入の面接試験であって以来、式典で何度も見ているはずだけれど、どうにも思い出せない。

「そうそう、ただの孫馬鹿な老紳士よ!」

木下が色々なことを含めたような口調で言ってけらけらと笑った。

宮藤は少し恥ずかしそうにしている。

「まあ、この学園では親族がお偉いさんなんて珍しい話じゃないでしょ。ひーちゃんだって人のこと言えないし。」

いやらしい目付きだ。きっと言うつもりだ。

「え、気になるなー!」

木下が目を輝かせて身を乗り出してきた。

サバサバとしてそうで意外とミーハーのようだ。