「まあ、言い訳もなくはないから行きましょ。」
誰のことを言っているのか気になっていたけれど、木下の笑顔は強引だった。
陽光は僕の肩から手を離して無言のままカフェオレに口をつけた。
アイコンタクト。
無言の会話。
何か隠された気がする。
「今日はあたしたちが紹介したから、おでかけの時は先輩方のオススメが知りたいわ」
「うん、考えておくよ。」
僕は早速、二人が喜びそうな、そしてまだ知らない店はどこだろうかと脳内地図を点検していた。
「いつ行く?俺は平日の放課後と土曜日の午前は部活があるんだよね。ひーちゃんはいっつも暇。」
暇人と言われてムッとしないでもないが、事実なので仕方がない。
「あたしはいつでも平気よ。かんなは?」
「日曜日に祖父と出かける予定ですから、土曜日の午後にしていただけると嬉しいです。」
「また“おじいさまとデート”?理事長も暇ねー。」
「今週は美術館デートなの。」
宮藤は祖父が好きなのだろう。嬉しそうだ。
彼女の隣を歩く“おじいさま”はどんな人だろうと想像しかけて思考が止まる。
“理事長”?