宮藤を直視できなくて、視線を木下の方へ向けると、その背中に一眼レフのカメラが掛かっていた。
「木下は写真を撮るの?」
「うん、趣味でね。ほんとにお遊び程度だけど。」
お遊びと言うには大きすぎるカメラだ。
「そうだ、今日の記念に一枚撮らない?」
三脚は持ってきていなかったようで、柵にカメラを置いて位置を確認している。
「10秒で撮りまーす。」
セルフタイマーの赤いランプが点滅する。
「フラッシュが光るから目をつぶらないでね!」
フラッシュが二度光り、軽快なシャッター音が響いた。
「うん、よく撮れてる。」
液晶で写真を確認して満足げな木下は、それを僕らにも見せた。
笑顔の四人が一列に並んでいる。
僕と宮藤が肩を並べて写っている。
なんだかくすぐったかった。
「佳乃ちゃん、焼き回しして!」
「もちろん!でも、四人だけの写真にしないとね。」
密かな笑い声が満ちる。
会ってすぐに笑いを共有できることが嬉しかった。
秘密を共有する四人。
何かが変わることが苦手なはずだったのに、この変化を苦痛には感じなかった。
この一夜、僕らは新しい春を始めたのだ。