「誘われもしないのに来てしまってご免なさい。この子って何だかあぶなかしいから放っておけなくて。」

もしかして、木下は怪しいやつだと警戒しているのかもしれない。

背中が冷えるような、それでいて熱くなるような感じがした。

「いや、いいんだ。こっちこそよく考えないで誘っちゃって申し訳なかったよ。普通、女の子が一人で夜に出歩くなんて危ないよね。」
「姫村さん、違います。」

僕が最後まで言い切る前に、宮藤が言葉をかぶせてきた。

心なしか怒っているように見える。

「佳乃は姫村さん見たさでついてきただけなんです。ただのミーハーです!ごめんなさい、秘密の場所なのに。」
「あやまらないでいいよ。同室の子には知らせない方が難しいし。」
「うんうん、二人とも気にしないで、いつでも遊びに来たらいいんだよ。」

陽光の声が弾んでいる。美人に気をよくしたに違いない。

現金なやつだ。

自分も自己紹介して、彼女募集中なんて言っている。

「それにしても、いい眺めね。夜桜で花見もできるし、星はたくさん出ているし。」

柵に寄りかかりながら木下が気持ちよさそうに言った。

もう、くつろいだ雰囲気になった彼女と比べて、宮藤は緊張した様子でラグに座った。

僕の隣に。