「…こんばんは。」
恐る恐る顔だけをのぞかせたのは、期待通りの彼女だった。
僕と目が合うと、ほっとしたように声を漏らしたのが気のせいじゃなければいい。
「宮藤ちゃん、いらっしゃい。あたたかいカフェオレがあるよ。」
陽光の呼びかけに戸惑ったような顔をした。
その事を不思議に思いながら、頭の片隅では私服の宮藤がかわいいな、なんて考えていた。
体を半分だけ出した彼女は、部屋着らしいチャコールグレーのカーディガンと薄い色のジーンズを着ていた。
「あの、同室の子も一緒についてきてしまったのですけど、大丈夫、ですか?」
僕らが返事をする前に、宮藤を後ろから押し出して、もう一人の女の子が姿を現した。
「はじめましてこんばんは、お兄様方。木下佳乃と申します。」
黒猫のような長身の美人が、慇懃な台詞と作り笑顔でお辞儀した。
彼女は宮藤の背中を押して僕らの方へ寄ってきた。
僕はと言えば、宮藤との再会と予期せぬ出来事とぼんやりとした不安で心臓を暴れさせていた。
鎮まれ。