幾度目かの揺れの後、
唐突に天井が崩れた。

差し込む月影。


「あ!見て。光!」
カスミはそう叫ぶと駆け出そうとした。

別にこの危機的状況から助かった訳ではないけれど、
お互いの輪郭がかろうじて判るしかない薄闇の中、
差し込んだ明かりは天の助けのようだった。

「走るなよ。危ないぞ」
ヒサヤが腕をとって引き留める。
けれど、ヒサヤの力強い大きな手のひらは、それに反して優しく柔らかい。

それがなんだかむずがゆくて、
「はい」
カスミは素直に従う。


2人が出会ったのは小1時間ほど前なのだが、
もう随分とこうして手を繋いで歩いているような気がする。

心細さで繋いでいたはずの手は、いつの間にか信頼と名を変えていて、
2人は手と手を取り合って共に光の下を目指した。