もうどんなに悲しくても涙が出なくなって、カラカラに渇いた私がいた。

どうやらカビにはならなかったみたい。


「忠士……」

返事がないってわかってるのに名前を呼ぶ。

「どうした?」

返事があった。

「え?」
「ほら、これ作ってきたから、もう大丈夫」

服はボロボロで、髪はボサボサで、髭面で、汚い男が私の前に立ち、自慢気にビンを差し出してきた。

「忠士?」
「あ、そうか。ただいま」
「どこ行ってたの?」
「だから、これを作りに」

差し出されるビン。

「何これ?」