早苗が帰った。
翔が寝てしまったのだから、仕方がない。
「俺も酔ったから寝るよ。梓も少し寝よ」
「うん」
翔の眠る部屋に行きたかったのかもしれない。
もう一組布団を敷くスペースはなくて、ヨシと同じベッドで眠ることにした。
恋人同士、別に普通のことだ。
ヨシと同じベッドで寝たことなんて何度もある。
だけど、今日は隣に翔がいる。
それだけで“いつも”とは全然違う。
ドキンドキンと激しい鼓動。喉が渇く。
翔はベッドに背を向けて少しだけ丸くなって眠っている。
スースーと可愛い寝息をたてて。
「俺たちも寝よう」
ヨシに手招きされ黙ったまま布団に入った。
ヨシに背を向け、目を瞑り何も考えないようにする。
視界が暗くなると、耳には翔の寝息が響いた。
意識したくないのに。
翔を嫌というほど意識してしまう。
寝なきゃ。
さらにぎゅっと目を瞑った。