ダイニングに戻ると、トイレから戻ってきたばかりだろうか、翔が不機嫌そうに鍋を見つめていた。
“好きな人って誰?”
訊きたいのに、訊けない。知りたいのに、知るのが怖い。
「早く食おうぜ」
とっとと終わらせて帰りたいと言っている、翔の顔。
あたしがいるから翔はこんなにつまらなそうなのかな?
悪い方ばかりに考えが向いてしまう。
「クリスマスに鍋って何だかおかしいよね」
さっきまで泣いていた早苗が無理して笑う。
「でも寒いからちょうどいいよ。な?梓」
ヨシのフォローにとりあえず口角だけ引き上げて笑った。
翔は黙々と食べ物を口に運び、酒を飲む。
「翔、飲みすぎじゃないか?」
「うるせぇな。お前も飲めよ」
ヨシの心配をよそに、ついに翔は飲み過ぎて酔い潰れてしまった。