翔のいない帰り道。
あたしはヨシと並んで歩いていた。
体育の授業がどうだとか、くだらない日常会話を交わす。
少し汚れはじめた革靴と、見慣れた夕暮れ。
「梓」
ヨシに呼び止められ、足を止める。
「好きなんだ。付き合ってくれないか?」
「え?」
ヨシがあたしを?
まさか。
「やだ。からかってるの?」
笑って誤魔化そうと思った。
何も聞かなかったことにしてしまいたい。
だって、あたしはずっと気持ちを伝えることを我慢してきた。
本当の気持ちを言ってしまったら、3人は終わってしまうと思ったから。
それなのに、どうしてヨシはそんなことを言うの?
「ずっと好きだったんだ」
「ダメだよ。だってあたし……」
「翔のことが好きだから?」
あたしの言葉を遮るように、ヨシが言った。