♪~

部屋に響いた着うたを聞いて、俺はワインをテーブルに置いた。

着信は早苗だ。


「さなえ?」

「もしもし翔?大丈夫?飲み過ぎて寝ちゃったみたいだったけど」

耳に響く、早苗の声。

「いま、どこ?」

「今?梓の家から帰ってるとこだよ」

カーテンを開き、星のない真っ暗な空を見上げる。

「いまから、あえない?」

これは酒のせいだ。
全部、酒のせい。

「おれ、さなえにあいたい」

俺の口が言った。
本能的に、そう言った。

「酔ってるの?」

「ああ。すこし。いますぐさなえにあいたいんだ」

呂律がうまく回らない。

「あたしも翔に会いたいよ……」

早苗の声が悪い。
甘えるように、すがるように、俺を誘うから。

「はやくきてよ。いま、すぐ……」

俺の、そばに。