そんな顔、いつもあいつに見せてるんだろうな。

俺の知らない梓の顔。

どんなに望んでも、決して手に入れることのできない梓の思い。


早く諦めてくれ、俺。

正直そろそろしんどいんだ。

足取り軽く席に戻っていく梓の背中に目を向けると、俺は深い深い溜め息をついた。


どうしてヨシなんだ。

どうして俺じゃないんだ。


周りは次の古典のテストの予習だと、参考書を片手に真剣な表情を浮かべている。

テストなんてどうでもいい。

俺は強く目を瞑り、今もなお鼻に残る梓の香りに

少しのメマイと激しい焦燥感にかられた。