ヨシは頷くと、何かを思い出したように切り出した。

「そう言えばお前、早苗に告られたんだって?」

「誰に聞いたんだよ!」

「早苗本人だよ」

あいつ。

女はすぐに話したがる。
わからない生き物だ。

「振ったらしいな」

「まあな」

これ以上突っ込まれたくなくて、俺は違う話題を探した。

それなのにヨシは、話題を逸らしてくれない。

「好きな奴いるんだって?」

「それは振る口実。好きな女なんていねーし」

全てを見透かしているようなヨシの目が、俺は苦痛でたまらなかった。

街中が浮かれ気分なように、俺だって本当は浮かれたいんだ。

「翔、お前さ……」

「あ?」

「いや。何でもない」

お前……に続く言葉が気になった。

ヨシは俺の気持ちに気づいているのか。

まさか。
そんなことないよな。
俺はうまくやっているはずだ。