「梓にはヨシがいるじゃん」

「知ってるよ!」

わかりきったことを言われ、思わずイラついてしまう俺は、本当に心が狭い。

「あたしと付き合ってよ」

早苗ってこんなに積極的だったんだな。
今はそんな感心をしている場合じゃない。

好きだと言われて悪い気はしないってのが正直な意見だけど、そう簡単に好きでもない女と付き合えるほど、俺は器用じゃない。

「ごめん」

一刻も早くこの場を立ち去りたかった。

重たい空気なんてまっぴらごめんだ。

俺は立ち上がると、唇を噛み締める早苗にもう一度小さく謝って部室を後にした。