「健一ってば、聞いてんの?」 少し拗ねた表情でおれに聞いてきた。 「悪い、悪い。ほらイヤホンしてたからさ」 おれはそう言って、耳から外したイヤホンを里美に見せた。 「まっ、いいけどさ」 そう言うと、 里美はおれの腕を掴んで引っ張った。 「早く行くよ」 「ちょ、まだ時間あるじゃん」