人工生命体でありながら自由を手にし、死ぬ運命に進む道を選んだはずが不死を得た。

 天性の強運の導き、ベリルだからこそ辿り着いた結果──そう考える他はない。

 誰かの命を犠牲にしてまて求めてはいなかった自由だとしても、彼にはその運命が指し示された。

 そうした思考を巡らせていると、背後に気配を感じて現実に戻る。

「ベリル。眠れないのか?」

 セルナクスは躊躇いがちにベリルに近づいた。

「空が近い」

 それに「ああ……」と夜空を見上げる。ウェサシスカの住人にとってはいつもの空だが、地上にいる者にはとても近く感じるらしい。

 ──新月の夜は地上を暗くする。セルナクスは星空を眺めるベリルの横顔に、短いながらも滑らかな金糸の輝きと、それに負けないエメラルドの瞳に目を細める。