ボナパスを倒すために私の力は必要なかったかもしれないが、二人が傷つかずに済んだのなら──

「呼ばれた意義はあったか」

 リュートとティリスの若々しい感情のやり取りに、ベリルは目を細めると同時に楽しんでもいた。

 恋愛感情の欠如は生まれながらのものだ。しかし、その感情が理解出来ない訳ではない。

 人という存在を愛しく思えばこそ、ベリルは戦いでしか救えない命のために傭兵という道を選んだ。

 ──どれほど死力を尽くそうと、伸ばした手を掴めない事もある。私の力で救える命など、ごくわずかだ。

 それでも、救える命があるのなら力の限り手を伸ばし続けよう──

 ベリルもまた、リュートと同様に己の存在を良しとはしていない。さらにベリルは、自分自身さえも道具として認識していた。

 上手く使いこなせるように、それだけの訓練を積んできた。それは、これからも変わらない。