──リュートは半魔族であるが故に全てを割り切り、多くの事を諦めてきた。そうする事で生きてきた。

 しかしいま、ベリルの存在が何かを不安にさせ、何かの希望を灯している。どうにも掴めない感覚に戸惑いが生まれていた。

「ああ。大丈夫だ」

 口元を緩ませて優しく応えるリュートにティリスは安心し、隣に腰掛けるとそっと肩に頭を預けた。

 リュートは高鳴る鼓動が彼女にばれてはいないだろうかと気を張り詰める。けれど、平静を装えば装うほどに鼓動が速くなった。

 一時はどうなることかと肝を冷やしたが、頬に触れる空色の髪に目を閉じて肌に伝わる彼女の(ぬく)みに安堵し、小さく溜め息を吐いた。

 ティリスが無事なら俺はどうなろうと構わない。それでも、この想いを伝える訳にはいかない。