「あの」

 扉が開かれ、おずおずとティリスが顔を出す。

「丁度良い。彼の相手を頼む」

 リュートは相手をされていたつもりはないとベリルの背中を睨みつけた。

「いってらっしゃい」

 ベリルを見送ったあと、ティリスはリュートの傍に歩み寄る。そこにいつもの快活さはなく、気遣うような瞳を向けていた。

「リュート。大丈夫だった?」

 それは、魔族化した事を()んでの言葉だとリュートは直ぐに理解した。

 精神的にも肉体的にも、魔族である事が重くのしかかっている。されど、ベリルという人間によって己の意識がぐらつき始めている事をうっすらとではあるが感じていた。

 魔族というだけで虐げられてきた自分が、誰かを愛する事など許されるのだろうか。

 いや、違う。俺と共にいる事でティリスを自分の運命に巻き込んでしまう事を恐れている。