「その図体を活かせ」

 言ってベリルは屋根に登り、道具や材料を手渡せとリュートに指示を出す。

 リュートが乗ると穴を大きくしてしまうが、その身長のおかげで梯子(はしご)は必要がない。

 コルコル族には重たいものも難なく運ぶリュートに羨望の眼差しが注がれ、修繕作業は滞りなく進められた。

「ありがとうございます。助かりました」

 レキナはベリルとリュートに深々と頭を下げる。

 ボナパスの凄惨な攻撃に遭ったコルコル族の人々は、これまで恐怖で何も手に着かず、家屋は壊れたままになっていた。

「他にあれば言うと良い」

「はい。ありがとうございます」

 そうして、修繕を終えたベリルはロールケーキを作るため野外調理場に向かい、リュートは子どもたちと遊んでいるティリスを見守っていた。

 ティリスの笑顔にリュートの口元も緩む。

 還ることが出来るなら、還りたいという気持ちは嘘じゃない。戻った世界が安全などでは決してないが、俺たちには俺たちの世界がある。

 例え、俺の存在が受け入れてもらえなくとも──そんな思考を過ぎらせたとき、大きな羽音がしてリュートの背後で何かがドサリと落ちた。

 すかさず立ち上がり腰の剣に手を添えて振り返る。